はじめに
屋外広告のコラムシリーズも、とうとう3つ目になりました。
今まで屋外広告の歴史や種類、さらにはその長所と短所を学んできました。
今回の屋外広告のコラム第3弾は、広告業界を取り巻く市場についてのご紹介です。
2020年から本格的に始まった、この未曾有のコロナ禍で、
一体、屋外広告はどのような立ち位置になっているのか、皆さんと一緒に見ていければと思います!
広告業界自体の動き(2021年電通の記事参考)
2022年2月に電通が発表した、2021年度の日本の広告費に関するレポートによりますと、
2021年の総広告費は、通年で「6兆7,998億円(前年比110.4%)」という結果になりました。
下図を見ていただくと分かる通り、
新型コロナ感染症の大流行前の、最高額をたたき出していた2019年の広告費に迫る勢いであることが見て取れるかと思います。
(株式会社電通「2021年日本の広告費news」より引用)
その要因として、上半期は、感染拡大に伴う緊急事態宣言・まん延防止等重点措置などに伴い、2020年と同様に新型コロナの影響を大きく受けた企業も多く存在しました。
しかし、下半期には、コロナ禍からの回復に伴う景況感や消費者心理の改善の動きが見られ、テレビメディア広告費が回復しました。
さらに、巣ごもり需要で自宅にてショッピングを楽しむ人が増えたことにより、インターネット広告費の成長が大きく加速したことが広告市場の成長へと繋がったとみています。
そして、そのインターネット広告費については、1996年からの実績について1997年に電通が推定を開始して以来、継続的に高い成長率を維持しており、2021年には2兆7,052億円、前年比121.4%となり、2021年の広告費の約4割を占めることとなりました。
なんとそれは、今まで日本の広告費の軸であった、マスコミ四媒体※の広告費(2兆4,538億円、前年比108.9%)を初めて上回ったのです。
(※マスコミ四媒体の広告費とは、新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費の合算、それぞれの広告費には制作費が含まれています。)
(株式会社ジェネシスコミュニケーションWEBより参照)
とりわけ昨今は、インターネット広告の市場の広がりの要因として、映像系広告を中心にYouTubeやTikTokなどのプラットフォームの発展による、動画広告の需要の高まりが強くなったことも寄与しているでしょう。
ひいてはデジタルプロモーションの活用であったり、コロナ禍においては、インターネットを通して感染症についての関連情報などをより多くの人へ伝達する役割を担ったと考えられます。
プロモーション広告と屋外広告の動き
2021年のプロモーションメディア広告費 は1兆6,408億円(前年比97.9%)となりました。
プロモーションメディアは屋外、交通、折込、ダイレクトメール、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像が含まれています。
なんといっても、2021年度は東京2020オリンピック・パラリンピックの開催をはじめ、各種イベントや従来型の広告販促キャンペーンも徐々に再開されました。
しかし、依然として新型コロナの影響は大きく、通年では広告費は減少となりました。
(株式会社ジェネシスコミュニケーションWEBより引用)
この厳しい状況下の中でも、巣ごもり・在宅需要などを取り込んだ折込チラシやDMに関しては増加傾向となりました。
さらに、主要駅近辺にて、大型で目立つデジタルサイネージなどインパクトのある屋外広告が増加し、映像広告などでの活用が進みました。
例えば2021年度は新宿駅東口にございます、3Dのように飛び出して見える猫の映像で一躍有名になった、「クロス新宿ビジョン」などが登場したことで、より一層デジタルサイネージ市場を盛り上げました。コロナ禍にもかかわらず、リアルに見える猫に対する反響は大変大きく、「かわいい」・「面白い」などの意見をSNS上から得ることができました。
(株式会社JR東日本企画より参照)
しかし、在宅勤務の推奨によって、電車通勤者が減少したり、休みの日に外出する人が減ったことも相まって、交通広告に関しては1346億円(前年比85.8%)と減少傾向となってしまいました。
屋外広告の世界規模の拡大
では世界市場はどう変化しているのでしょうか?
世界各国でもロックダウンの解除や、海外からの入国者の規制の緩和などが始まったことにより、さらに徐々に新型コロナ感染症流行前に情勢が戻ってきていることも影響し、世界の屋外広告市場は2021 年には386億米ドルの規模に達しました。
予測期間中、いくつかの要因が世界の屋外広告の成長を促進すると予想されています。
コロナ禍における経済の反動もあり、特に新興国でのインフラ整備の増進が進んでいます。そのため、屋外広告に使用できるスペースが増加しております。
また、多くの人が公共交通機関を利用して通勤しているため、交通システムも屋外広告の収益性の高い手段となります。公共交通機関の近代化は、この世界市場の成長をさらに促進するでしょう。
その他の要因としては、デジタル屋外広告の開始、小売業の成長、都市人口の増加などが挙げられます。今後、世界の屋外広告市場は、2026年までに緩やかな成長を示すと予想されています。
さらに株式会社グローバルインフォメーションが発表した、市場調査レポート「デジタルOOH(屋外)広告市場:世界の業界動向、シェア、規模、成長、機会、予測(2021~2026年)」によると、デジタル屋外広告市場は、2021年から2026年にかけて12.3%以上の成長見込みとなっています。
(株式会社PR TIMESより引用)
近年では、IoT接続の向上、近距離通信、人工知能(AI)などの技術の進歩が、デジタル屋外広告業界の創造性を後押ししているとされています。デジタルサイネージ等の設置コストも低下していることもその要因のひとつです。
さらに、インフラが整備され、ショッピングモールなどが世界各地で増えたことで、屋外で過ごす人が増えてきました。その結果、企業はより多くの人々に訴求するための広告プラットフォームとして、デジタル屋外広告の採用に注力しています。
なにより、デジタルサイネージを用いた広告は他の広告よりもインパクトがあり、より広告主の意図を汲んだ内容を発信していけることも、市場が発展することに寄与していると考えられています。
今後の流れ
このことから、2022年6月現在、いまだコロナ禍であるものの、緩やかに広告市場は回復していくことが見込まれます。
各国で人の流動が緩和傾向にあり、海外への観光旅行も以前よりハードルが下がってきました。
グローバル経済の中で、日本国内の市場の活発化のためにも、広告関連の事業が発展してくことが大きく関与するかと感じました。
今後の日本の広告市場を考えた際、弊社の扱うエスカレーターの手すり広告は、結局はどこの立ち位置になるのか、具体的に考えてみようと感じました。
そのため、次回は屋外広告市場の中でエスカレーターの手すり広告はどういうポジションになるか検討していきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考サイト、文献
業界動向サーチWEB
広告業の動向についてPDF
2022年2月28日公開Yahoo!ニュース不破雷蔵様執筆記事
株式会社共同通信ピー・アール・ワイヤーWEB
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